知られざる
EPAのパワー

動脈硬化にEPA血管年齢を若く保つ!

1EPA量の減少で動脈硬化が進んだ血管が引き起こす病気が増加!

食の欧米化で肉中心の食生活になり、元来、魚中心の食生活であった日本人のEPAの摂取量が減少しています。EPAは、いわし、さばなどの青魚やまぐろのトロなど、油分の多い魚に多く含まれており、人体では作り出すことが難しい必須脂肪酸であるため、積極的に摂取する必要があります。EPA不足が深刻化するに従って、動脈硬化がすすむことによる血管が詰まるリスクが上昇。食生活の変化とともに、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患と言われる心臓病や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を発症する人が年々増えています。

グラフ:EPA消費量と動脈硬化性疾患死亡率推移
参考文献:泰 葭哉ら「わが国の栄養におけるEPAとEPAエチルエステルの血清脂質に対する効果」/第3回心臓血管薬物治療法国際会議 サテライト・シンポジウム 講演記録集 1989年10月19日(Medical Tribune)

2動脈硬化によりヒトは血管から老化する

血管は、からだに酸素や栄養素を運搬するためにからだ中に建設された道路のようなものです。

道路を長年使ってそのままにしておくと、いろいろなゴミが溜まったり、キズができて傷んだりするとの同じように、血管もヒトが産まれた時から休みなく酸素や栄養を運搬しているため、10歳代ごろから急速に動脈硬化の初期病変が広がり、20歳代を過ぎて30歳代になると動脈硬化がみられるようになります。

この傷んだ道路、血管のメンテナンスに、EPAが有効に働くのです。

その効果を見る前に、血管に溜まるゴミの正体と、動脈硬化のできる過程について解説しましょう。

まずは、血管に溜まるのゴミの正体について、それは、コレステロールや中性脂肪などです。

実際には、コレステロールや中性脂肪には、これらの脂質を運搬する...続きを読むリポタンパクというものが存在しており、それらに包まれた大きな分子として血管内を移動しているのです。

こういった担体とともに脂質が血管壁の内部へ取り込まれると、そこへこれらの老廃物を処理するためにマクロファージ※1という細胞が集まってきます。

マクロファージは、貪食細胞(どんしょくさいぼう>といって、生体にとって不要な異物や老廃物を食べて細胞の中で処理してしまう役目を果たす細胞なのですが、老廃物が多くなると細胞内部に老廃物を溜め込んだまま、泡沫化細胞となってそこへ蓄積してしまうのです(アテロームの蓄積)。

そうなると、血管はその部分が肥厚し、内側へ盛り上がり、内腔が狭くなった状態になります。

これがアテローム性動脈硬化です。アテロームでできた血管内腔への盛り上がりの部分をプラークと呼んでいます。

図:アテローム性動脈硬化
画像出典:国立循環器病研究センターHP
URL:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/disease/atherosclerosis.html

このようなプラークが形成された血管では、血管を形成している細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、新しい血管の細胞も作れなくなるため、血管自体が固くもろく壊れやすい古い血管となってしまいます。

古びたビニールホースのイメージです。 血管は、血流から受ける圧力に常にさらされており、圧力に耐えなければなりません。しかし、動脈硬化によってもろくなった血管内皮は圧力に耐え...続きを読む切れずヒビが入ってしまうという事態が起こります。

そうなると血小板※2がそこへ集まり凝集し血栓ができるのです。血栓は時に部分的にプラークから分離して、血流に乗って全身に運ばれ、心臓、脳などの血管に詰まり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。

このような動脈硬化に端を発する心筋梗塞や脳梗塞発症への過程は、ゆっくりと時間をかけて進行します。

一般に40歳代から動脈硬化の症状が現れたり、動脈硬化が原因と考えられる病気は発症するといわれていますが、近年は10歳代の子供にも動脈硬化の例が報告されています。

これらの心血管系の緊急事態に至るプロセスの中で、EPAは、どのようにその進行を抑制してくれるのでしょうか?

  • ※1 動物の組織内に分布する大形のアメーバ状細胞。生体内に侵入した細菌などの異物を捕らえて細胞内で消化するとともに、それらの異物に抵抗するための免疫情報をリンパ球に伝える。大食細胞。貪食細胞
  • ※2 血小板(けっしょうばん、英名Platelet)は、血液に含まれる細胞の一種である。核を持たない。血管が損傷したときに集合してその傷口をふさぎ(血小板凝集)、止血作用を持つ

3EPAの働き

【EPAの効果】1,EPAは中性脂肪値を下げる働きがある

動脈硬化を起こす原因の一つにコレステロールや中性脂肪などの脂質とそれらを運搬しているリポタンパクが、血管内膜へ浸潤していくプロセスがあることは前項で述べましたが、EPAを摂取することにより、血液中の中性脂肪の濃度を下げることができることは、多くの実験データから証明されています。

「EPA含有飲料」囲繞時の血中脂肪値の変化量
日本臨床栄養学会雑誌33(3.4):120-135,2011
血中中性脂肪値が120-200mg/dlを中心としたボランティア計101名(男性61名、女性40名)を対象に、EPA含有飲料とオリーブ油配合飲料を対照飲料として無作為に割り付け、12週間飲用してもらい、血中中性脂肪の変化を主評価項目として有効性の検討ならびに安全性の確認を行った。その結果、EPA含有飲料を飲んだグループは血中中性脂肪値が摂取前値に比べ35.3~37.8mg/dl低下した。(低下率は19~20%)また正常値の人が用いても問題なく、安全性も確認された。
※血中中性脂肪低下作用には個人差があります。食生活は、主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを

【EPAの効果】2,EPAはプラークを安定化し破裂しにくくする

プラークの安定化は最近新たに見いだされた新しいEPAの機能であり、心臓血管イベントの抑制に大きく貢献しているといわれています。

EPAを摂取するとプラーク内の脂質に占めるEPAの割合が高まり、線維性被膜の厚さが厚くなり、プラークのカーブが平坦に近くなることが報告されています。

結果としてプラークが安定化して破裂しにくくなります。プラークの破裂は血栓の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を引き起こします。なので、プラークの安定化はとても重要なことなのです。

図:安定プラークと不安定プラーク

【EPAの効果】3,EPAには血圧低下作用がある

EPAの摂取が、赤血球の膜の流動性を高めて血液粘度を下げ、血圧低下の方向に働くことについては多くの論文が発表されています。

また、比較的魚油摂取の多い日本人を対象にした研究でも、1日2.7gのEPA摂取で収縮期血圧が有意に下がることが報告されています。

【EPAの効果】4,EPAには血小板凝集抑制に効果あり

つまり血栓をできにくくするということです。

EPAによって体内の血小板の活性化を鎮静化することは、心筋梗塞や脳梗塞に代表される血栓形成による心血管病の発症を予防するだけでなく、メタボリックシンドロームから血小板の活性化によって増悪する糖尿病、高血圧、脂質異常症などへ進展していくことを防ぐためにも有効であると考えられています。

図:安定プラークと不安定プラーク
COX : cyclooxygenase シクロオキシゲナーゼ
原文:寺野隆ほか 「EPA-高動脈硬化、抗血栓作用治療学」1995; 29: 1197-1201