魚の健康成分EPAが健康寿命を延ばすカギに
細見 神奈川県は、健康寿命日本一を目指して、「未病を改善するかながわ宣言」 を掲げているそうですね。
黒岩 はい。超高齢時代を迎えるためのヘルスケア・ニューフロンティア政策の一つで、「未病を改善する」とは、生活習慣病や認知症を防ぎ、病気になる前から心身をできるだけ健康な状態に近づけることです。そのために、東洋医学に基づいた健康状態の診断を普及させ、各地に未病センターを設置しています。
細見 重要な取り組みですね。日本人の寿命は延びましたが動脈硬化性疾患の死亡率は増えています。脳梗塞や虚血性心疾患などは健康寿命を縮めてしまいます。その原因として「魚離れ」があるといわれているんです。グリーンランドの先住民族イヌイットに心血管系の病気が少ないことをご存じですか?魚とアザラシを主食とする彼らの血液成分を調べたところ、EPA(エイコサペンタエン酸)という脂肪酸の一種の含有率が驚くほど多かったのです。魚に含まれるEPAは血液・血管の健康維持に大切な成分で、心疾患リスクの軽減や血中中性脂肪の低下、抗炎症などのさまざまな作用が認められています。
黒岩 血管の病は本当に恐ろしい。未病の改善には食、運動習慣、社会参加の三つを見直す必要があり、なかでも食は非常に大切な要素です。毎日の食事でより健康に近付けていく、というのは、私たちの未病コンセプトに一致する考え方です。
脂肪酸のバランスに注目!
細見 神奈川県の健康寿命延伸への取組を私たちもお手伝いしたいと考え、県内の小学校に「健康づくりカード」を配布して、魚食の良さとEPAについての知識を普及させる活動に私たち日本水産も参加しています。
黒岩 魚食と健康のつながりに気づいていない人は多いかもしれません。ぜひ広く普及させたいですね。県では心身の未病状態を客観的に評価し、その変化を「見える化」して、科学的な裏付けをとっていくことに取り組んでいます。自分の健康に良いEPAが足りているかどうか、知る方法はあるのでしょうか。
細見 血液中のEPA/AA比という脂肪酸バランスの数値を調べることで分かります。AA(アラキドン酸)は必須脂肪酸ですが、肉や植物油(リノール酸)を多く摂取していると体内で増え、動脈硬化を起こしやすい体質にします。日本水産では健康診断の検査項目にEPA/AA比を加え、健康指標のひとつとし、社員の健康意識改善につなげていきます。日本人の平均は約0.5で、私は倍以上の1.8でした。これから神奈川県の漁業協同組合にも協力してもらい、漁業に従事されている方のEPA/AA比を調べる予定です。
黒岩 漁業者の方ならば高い数値でしょうね。実は私も毎朝EPAのサプリメントを飲んでいるんです。今年フルマラソンを完走したのですが、本番前から勧められて、始めました。
細見 だから知事は若々しいんですね。EPAのサプリメントはスポーツ選手にも活用されています。血液のなかの赤血球が柔軟になって、流れが良くなり、酸素摂取の効率がよくなるんです。
黒岩 考えてみると魚をよく食べていた昔の日本人の習慣は、自然に病気予防になっていたんですね。未病改善は原点に戻ることでもあります。さらにEPAという科学的な裏付けで私たちは適正な健康づくりを進めていくことができる。私もがんばります。